潮風のいざない

ミランダは過去を忘れるために故郷イギリスを出てギリシアの小さな島カルモスにやってきた。
国際的バイオリニストとしての第一歩を踏みだした矢先、交通事故で演奏家生命を断たれ、マスコミに騒がれた。
誰にも注目されず、たった一人で再出発したい―― それが彼女の望みだった。
ところが島を訪れて間もなく、運命は急転する。
巨大企業(サヴァキス・シッピング)社を牛耳るセオ・サヴァキスが情熱的なアプローチをかけてきたのだ。
セオの本当の思惑も知らず、ミランダは彼に惹かれていくが……。
雨のなかを急ぐソフィーに、その災難は降りかかった。
あっという間に、奮発して買った靴もコートも台なしにされ、ソフィーは怒りのあまり、泣きたくなった。
ロールスロイスが泥水をはねあげていったのだ。
しかも、車の持ち主ドミニクは謝るどころか彼女の不注意をなじる。
二人は偶然にも共通の知人の結婚式に出るところだった。
披露パーティで同席してもいがみ合いは続いた。
しかしその実、ドミニクは彼女に強烈に魅了されていた。
そして、ソフィーも同じ思いに駆られていることを確信した彼は、大胆この上ない誘いの言葉を口にした。
見事な金髪をくすんだ茶色に染め、体の線を台無しにする服を着て、アビゲイルは別人になりすまし、静かに暮らしていた。
すべては、亡き親友プリンセス・ジェンマの遺志にこたえるため。
ジェンマはわが子が愛のない環境で育てられるのを嫌がり、幼子をひそかにアビゲイルに託したのだ。
だがある夜、ジェンマの異母兄プリンス・カイランが、アビゲイルの居所をとうとう突きとめた。
三年ぶりに会う彼を前にして、危険な記憶がよみがえる。
満月の夜に一度だけ交わした、忘れもしないあのキス……。
今、カイランの目に浮かぶ怒りと蔑みに、彼女は身を震わせた。
イヴが祖母とともにひっそりと暮らす館に、奔放な生活を送る母キャシーが男性を伴ってやってきた。
母は三十代と年齢を偽り、彼には娘の存在を秘密にしているらしい。
男性の名はジェイク・ロメーロ。
自ら所有するカリブ海の島に住む、世界的な実業家だ。
ジェイクは、若さに似合わず地味なイヴに関心を抱いたようで、館に滞在中、何かと彼女にかまってくる。
キャシーという恋人がいるのに、いったい何を考えているの? イヴはジェイクに対してそっけない態度をとりつづけた。
そうしなければ、初めて感じる胸のときめきに屈してしまいそうだった。
ジェイドは、著名な美容整形外科医グレースのもとで働いている。
自身も生まれながらの痣に悩まされたジェイドは、同じように苦しむ人々を救いたいと思っていた。
そしてついに念願が叶い、クリニックでは財団を設立し、経済的に手術する余裕がない人たちを助けることになった。
その祝賀パーティの最中、一人の魅力的な男性がジェイドに近づいてきた。
ギリシア系アメリカ人、ルーカス・デマキス。
造船王国の主だ。
「きみに会うために来た」初対面だというのに、彼はジェイドを誘惑する。
男性に不慣れなジェイドは、戸惑いつつも彼に魅せられた。
もちろん、ルーカスの言葉の真意に気づくはずなどなかった。
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